●地涌の菩薩(じゆのぼさつ)
お釈迦様は宝塔の中から大衆に向かって、自分の入滅にだれかこの娑婆世界に法華経を弘める者はいないか、そのものにこの経を委託しようと呼びかけられます。これに対して薬王菩薩等八万の菩薩、八十万億の不退の菩薩らが弘経を申し出ますが、お釈迦様は応答しません。そして、他方世界から娑婆世界に来ていた八恒河沙の(ガンジス川の砂の数の八倍)以上の無数の菩薩が仏前に起立して、「私たちがこの娑婆世界に法華経を弘めましょう。」と申し出ます。お釈迦様は、「お止めなさい。汝らがこの経を護持する必要はない。この娑婆世界には六万恒河沙と称させる多数の菩薩がいるが、これらこそが娑婆世界で経を弘める任を担っているのである。」を教えられるのです。
この言葉が終わるか終わらないうちに、大地がさけて中から無数の菩薩が同時に雲の涌き出るように現れてきました。その姿は金色であって、仏と同じように三十二相を具えて無量の光明を放っています。これらの菩薩は、娑婆世界の下方にある虚空界に住んでいたのですが、お釈迦様の御声を聴いてそこから出て来たのでした。その1人ひとりが大衆の指導者ですが、おのおの六万恒河沙という数のお伴をともなっているのです。
あらわれ出て来た菩薩は、それぞれ空中の昇って宝塔の中におられる多宝如来とお釈迦様の所へ詣でて礼拝し、さらに十方世界からこの場に来ておられるお釈迦様の分身仏らも礼拝し、種々の讃法をもって仏をほめたたえました。
この間お釈迦様も大衆も黙然としていました。それは五十小劫という長い時間でありました。お釈迦様の神力はそれをわずか半日のように人々に感じさせたのです。さて、虚空に充満したこれらの菩薩の中に上行・無辺行・上行・安立行という四人の最高の指導者がいました。
小劫=きわめて長い時間をいう単位。人間の寿命が8万歳から100年ごとに1歳を減じて10歳になるまでの間、または10歳から100年ごとに1歳を増して8万歳になるまでの間。また、両者を合わせて一小劫ともする。
参考資料
『法華経講義上 法華三部経略講』
他
