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●大通智勝仏(だいつうちしょうぶつ)

法華経化城喩品に説かれる仏。大通仏・大通ともいう。仏と衆生との結縁関係が今番出世(インド応現)の仏より始まるのではなく、過去三千塵点劫の昔よりすでにあったことを示す。即ち大通仏は釈尊以前三千塵点劫の昔、大相という時代の仏で、もとは好城国王であり、十六人の王子があった。のちに王位をすてて出家、成道して仏となった。十六王子も出家して沙弥となり、大通仏の法華経説法によってそれぞれ仏となった。その第十六王子が釈迦牟尼仏である。大通仏は法華経説法ののち、長い禅定に入ったため、十五王子はそれぞれの国土に赴き、それぞれの座にのぼって説法したが、第十六王子の釈迦牟尼仏のみ娑婆世界にのこり、娑婆国土の衆生に法華経を説法した。


三千塵点劫(さんぜんじんでんこう)
法華経化城喩品に、大通智勝仏の出世が久遠なることを明かす譬喩。即ち三千大千世界のあらゆるものを擦って墨となし、この墨を東方に千の国土を過ぎて一点ずつを下してことごとく尽す。そうしてその過ぎさったあらゆる世界を微塵にくだき、その一塵を一劫(時間の単位をいう)として数えたる総数をいう。

三千大千世界(さんぜんだいせんせかい)
須弥山を中心として周囲に九山八海があり、上は色界の初禅天、下は風輪にいたるまでの範囲を一小世界といい、一小世界が千集まって一小千世界、一小千世界が千集まって一中千世界、一中千世界が千集まって一大千世界という。小中大の三種の千世界によって構成されているところから三千大千世界・三千世界等と称する。


十六王子(じゅうろくおうじ)
東方に阿閦仏(あしゆくぶつ)(歓喜国)、須彌頂仏(しゆみちようぶつ)、東南方では師子音仏(ししおんぶつ)、師子相仏(ししそうぶつ)、南方では虚空住仏(こくうじゆうぶつ)、常滅仏(じようめつぶつ)、西南方では帝相仏(たいそうぶつ)、梵相仏(ぼんそうぶつ)、西方では阿彌陀仏(あみだぶつ)、度一切世間苦悩仏(どいつさいせけんくのうぶつ)、西北方では多摩羅跋栴檀香神通仏(たまらばつせんだんこうじんづうぶつ)、須彌相仏(しゆみそうぶつ)、北方では雲自在仏(うんじざいぶつ)、雲自在王仏(うんじざいおうぶつ)、東北方では壊一切世間怖畏仏(えいつさいせけんふいぶつ)、娑婆国土では第十六番目の王子が、釈迦牟尼仏である。


脱益(だっちゃく)
衆生の心田に下された仏種が成熟し解脱の利益をえること。仏の衆生教化の過程を三つの段階で表した三益(下種益・熟益・脱益)のうちの一つ。下種益とは成仏の因である仏種を衆生の心田に下すこと。熟益とは衆生の心田に下された仏種が成熟の利益を得ること。

解脱(げだつ)
束縛から解き放たれること。何かから自由になることの意。煩悩に縛られることから解放され、生死の迷いの苦から脱すること。煩悩から解放されて自由な境地を得ること。解脱の境地を涅槃という。


参考資料
『日蓮宗事典』
『日蓮聖人遺文辞典 教学篇』
 他

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